『祈昌の世迷言』・・・アジアの片隅より

離島と本土を繋ぐ日本最小の『暁橋』のたもとから、娘と善き隣人に届けます。

宇品第6公園にて

宇品第6公園にて



 今日は、夕方から店に入るし、土曜日じゃけぇ、長男が通いよる通所施設が休みの為、朝食の前に、長男を連れて「宇品第6公園」まで散歩に行った。



 散歩たぁ言ぅても、近所の「宇品第6公園」で、長男の好きなブランコで遊ばせて帰るだけなんじゃが・・・。



 ブランコを見付けると、帽子を脱ぎ、ぶら下げちょる鞄を儂に預けると、急いでブランコに突進して行って漕ぎ始めるんじゃった。



 長男は、小柄(身長160㎝程)ながら、潜在的な身体能力が異常に高く、特に体幹が極めて強く、敏捷性や瞬発力も強ぉて、幼少の頃から古武道で鍛練して来て、公式試合の審判員の資格を持つ儂の目から見ても、恐らくトップアスリートを凌駕する程の身体能力が在るんじゃった。



 『高い場所は怖い』と言う概念が無い様で、以前、入所しちょった施設で行方不明になった事が在り、職員総出で探した処、三階建ての施設の屋根に登って居る所を発見され、職員が消防に連絡して救助を要請したら、消防車が到着する前に、雨樋の配管をスルスルと伝って降りて来て、事なきを得たらしぃ・・・その後、雨樋の配管を登れない様に、「忍び返し」が取り付けられたんじゃった。



 昨年、出来たばかりのボルダリングの施設へ、友人の家族と一緒に行く機会が在って、試しに長男にも遣らせてみたんじゃが、初心者コースはアッサリとクリアしたけぇ、係員の人が上級者向けのコースに登らせてみたら、猿の様にスルスルと登ったんじゃった。



 通常、下りる時は、ハーネスと繋いだロープにぶら下がって、ゆっくりと降下するんじゃが、長男には、その事が理解できんけぇ、儂が、「おぉぃ‼降りて来いや‼」と呼んだら、ヘラヘラ笑いながら、自分でホールド(突起物)を伝って、猿の様にスルスルと下りて来たんじゃった。


 その光景を見た係の人が、チョッと興奮した口調で、


 「お父さん‼、息子さんに、本格的にボルダリングを遣らしてみたらどぉですか?・・・凄い選手に成れますよ‼」と、言われたんじゃが、


 「いやぁ、息子にゃぁ重度の知的障碍が在って、言葉も喋れんし、意志の疎通が上手い事とれんのんよ。・・・無理無理。」と、言ぅたら、


 「そぉなんですか・・・。」と、至極、残念で申し訳無さそうな表情をされたんじゃった。 



 これと同じ様な話は他にも在って、長男が、特別支援学校の中等部じゃった頃、体育館で走り回る長男の足の速さに驚嘆して、パラリンピックの選手に成れるんじゃないか?』と、思ぉて、色々と試みたらしぃんじゃが、結局、上手い事いかんかったらしぃんじゃった。



 そりゃぁそぉじゃろぉ・・・長男は、自分が興味が有る事や、遣りたい事が在る時に、自分の思いのままに行動するだけで、人に指図されて何かの競技に取り組もうとか、何かの大会で優勝して褒められたり自慢したいとか、そぉ言ぅ感情も野心も無いんじゃった。(もし、野犬や熊にでも追い掛けられたら、全速力で逃げ出すじゃろぉが・・・)



 儂も、長男の身体能力の高さには、彼が幼少の頃から気が付いちょって、知的障碍が有っても受け入れてくれる、体操教室とかスポーツクラブとか尋ね回ったんじゃけど、「怪我をさせて仕舞うかも知れませんし・・・」とか、「他の子供の迷惑に成っても困りますし・・・」と言われて、鄭重に断られ、儂も諦めたんじゃった。



 長男が、幼少の頃に診察してくださった医師の話では、「息子さんが異常に身体能力が高いのは、もしかしたらサバン症候群の一つの現れ方なのかも知れません。」と、仰っておられたんじゃが、もし、日本でも、欧米の様に、障碍児に対するスポーツの支援制度が充実しちょったら、長男も、2020年東京パラリンピックの選手として、出場で来たかも知れんと思ぉたりもするんじゃが、そぉ言ぅ運命なんじゃろぉ・・・。


 Destiny・・・。


 まぁ、いつもニコニコ顔をして、のんびりと過ごしてくれりゃぁ、それが一番じゃと思ぉちょるんじゃった。



 また、要らん余談が長ぉ成って仕舞ぉたねぇ(笑)


千田廟公園にて



 宇品第6公園は、それほど大きゅぅ無いし、遊具も、ブランコと滑り台だけじゃし、両サイドにベンチが3基づつ供えられちょるぐらいで、後はトイレと水飲み場が在るぐらいなんじゃった。



 じゃが、時々、長男を連れて利用するんじゃが、いつ行ってもトイレは清潔に保たれちょるし、ゴミ屑が転がっちょるのを見た事が無いんじゃった。



 以前のブログ記事で触れた、千田廟公園は、広いし、色々な遊具や施設が充実しちょるんじゃが、よぉけゴミ屑が散らばっちょるし、トイレは不潔な状態に成っちょるし、柔らかいボールを使いよるとは言え、野球の試合をしたりする、遊び方のマナーが悪い小学生等も居ったりして、好ましゅぅ無い状態なんじゃった。



 次男が使う、儂が嫌いな言葉に、「民度」と言う言葉が在るんじゃが・・・。



 民度(みんど)とは、特定の地域に住む人々の平均的な知的水準、教育水準、文化水準、行動様式などの成熟度の程度を指すとされる熟語で、最近使われ出したらしゅぅて、オジサンの儂には馴染みが無かったんじゃが、次男に言わせると、「宇品は民度が低く、己斐は民度が高い」らしぃんじゃった。



 儂の持論の中に、「その地域の様子を知りたかったら公園を見れば分る」と、言うのが在るんじゃが、それから言えば、「宇品第6公園」の周辺地域は民度が高く、「千田廟公園」の周辺地域は民度が低いと言う事なんじゃろぉか・・・。



 まぁ、下品で愚者の儂には、他人や地域の評価など、する気も無いし、出来る立場でも無いんじゃが・・・。



 長男が1時間ほどブランコを漕いで遊んだけぇ、切りが無い(放って置いたら2時間でも3時間でも遊ぶ)けぇ、未だ遣りたいみたいじゃったが、止めさせて帰る事にしたんじゃった。



 ブランコを漕ぐのにゃぁ、マラソンラグビーをする程の体力は要らんじゃろぉが、全く疲れた様子も無く、「いったいこんに(広島弁・この子)にゃぁ体力の限界と言うモンは在るんじゃろぉか?」と、いつも思うんじゃった。


モーニングセット

朝食の焼き鯖定食



 帰り掛けに、「喫茶TAKI」へ寄った。



 以前のブログ記事でも書いたんじゃが、パニック障害の為に「独り飯」が出来ん儂でも独りで来れる唯一の喫茶店じゃが、時々長男と一緒に行くんじゃった。



 長男の事で、儂は困る事が無いんじゃが、唯一、「食事」に関しちゃぁ、日々、頭を悩ませよるんじゃった。



 いつも言ぃよる事じゃが、長男は言葉を持たない。
 
 
 
 此方が話している内容は、或る程度理解している様なんじゃが、「物に名前が在る」と言う概念が無い様で、物の名前を言っても理解出来ん。



 動詞や形容動詞は理解できる様で、シュチエーションで何をするべきかを判断しよるみたいで、「これを捨てて来て」と、空き缶を手渡すと、ゴミ箱に捨ててくれるんじゃが、食事の時に「箸を持って来て」と頼んだら、スプーンを持って来たりするんじゃった。



 長男は、好き嫌いが激しい訳じゃぁ無いが、その時の気分で、食べたい物と、食べたくない物が在るらしゅぅて、これが噛み合わんと絶対に食べんのんじゃった。



 好物じゃけぇと言ぅても、続けると食べん事も多いぃんじゃった・・・実に難しく面倒くさい。



 じゃけぇ、家じゃと5~6種類のおかずを作って、息子が食べ終わった後に儂が食べるんじゃった。



 で、外食をする時は、長男が食べそうな料理を2種類頼んで、長男に選ばせて、それから食事をするんじゃった。



 「喫茶TAKI」へ、長男と朝に行った時には、「モーニングセット」「朝食の焼き鯖定食」を頼むんじゃった。



 今朝は、「モーニングセット」を選んだんじゃった。



 長男は、「モーニングセット」を食べ終えると、儂の味噌汁をジーッと見ながら手を合わせて儂の方をチラ見したけぇ、「食べてもえぇよ」と、言ぅたら、サッと味噌汁のお椀を掴んで自分のトレーの上に乗せて、嬉しそうな顔もせんこぉに黙々と吸いよった。(長男は味噌汁とかシチューとか汁物が好き)



 以前、「モーニングセット」「朝食の焼き鯖定食」を頼むんだ時、両方共、食べんかった事が在って、『今日も、あの時みたいに成りゃぁせんじゃろぉぁ?』と、不安がよぎっちょったんじゃが、無事に完食してくれたけぇチョッと嬉しかった。



 食事の後、部屋に帰って、3時頃まで部屋で過ごしたんじゃった。



 今日は、何処も預かってくれる所が無かったけぇ、仕方なく、4時頃に別れた妻の所に頼んで預かって貰ぉたんじゃが、妻の所に行った時は、好き嫌い無く、何でも出された物を食べるらしぃんじゃった。



 別れた妻の話じゃと、長男は人のランク付けや、遣り易い相手か遣り難い相手か格付けをするけぇ、儂が甘いけぇ、長男に嘗められちょるけぇじゃと言う事らしぃんじゃが、確かに、そぉなんかも知れんのんじゃが、儂が甘えさしちゃらんにゃぁ、長男にゃぁ他に甘えられる相手は居らんのんじゃけぇ、それでえぇと思ぉちょるんじゃった。



 仕事を終えて、別れた妻の所に迎えに行ったら、儂が行っただけで、そそくさと玄関まで鞄を抱えて来て靴を履いた。



 別れた妻の部屋を出たら、すぐに手を繋ごうとして儂の手を握って来て、向こう側から人が歩いて来たけぇ、チョッと恥ずかしい気がしたんじゃが、そのままで擦れ違ぉて行ったんじゃった。・・・アジアの片隅より