『祈昌の世迷言』・・・アジアの片隅より

離島と本土を繋ぐ日本最小の『暁橋』のたもとから、娘と善き隣人に届けます。

「恩賜のマスク」に思う

答弁のため挙手する安倍首相(2020年4月1日午後・共同通信社提供) 此方より寸借



 4月1日に、新型コロナウイルス対策として、安倍晋三首相が全世帯に布製マスクを2枚配布すると発表した事が、世間の物議を醸し出して話題に成ったんじゃが・・・。



 皮肉が込められた「アベノマスク」と言う造語が話題に成ったんじゃった。



 『冴えない政策だ!』と、海外メディアから揶揄されたとか、与党の幹部からも懸念の声があがったとか、批判的な報道が溢れちょったんじゃが・・・。



 多くのマスコミやネットユーザーが、ありとあらゆる所で笑い者にしたんじゃが・・・。



 儂は、安倍首相の信奉者でもなけりゃぁ、自民党の支持者でも無いが、「布マスク2枚の全世帯配布」については、大いに有難い事じゃと思ぉた。 



 マスクを装着しても、感染を防止する効果が低い事は、多くの専門家が指摘しちょるし、精々、咳やクシャミをした時に、飛沫か飛び散るんを抑える効果が有るくらいじゃろぉ・・・。



 マスクが欲しくても手にする事の叶わんで居る人々の手元に、確実に届く事には、人々を安心させる効果は在るし、大きな意味が在ると思うけぇじゃった。


不足するマスクのイメージ画像 此方より寸借



 昨年の年末辺りから、中国人観光客と称する輩が、全国のドラッグストアなどでマスクを爆買いする光景が目立ちよった。


 「日本製の高機能マスクをお土産に持って帰りたい」と言う理由らしぃんじゃが、その大半は、中国に持ち帰って高額で転売して暴利を貪るのが目的らしかった。


 日本でも、転売ヤーと呼ばれる不逞の輩が横行して、マスク不足に拍車をかけたんじゃった。


 今は、罰則規定が設けられて、ネットでも規制がかけられちょるし、各企業も、政府の要請を受けて増産体制に入っちょるし、異業種や各個人もマスクの製造に取り組んじょるけぇ、マスク不足は解消されそうなモンなんじゃが、一向に店頭に並んじょる光景に出会う事は出来んのじゃった。



 こんな話が在る。



 先月の末に、友人から電話が掛かって来た。


 ハッシー(儂の愛称)よい。あんたぁマスクが無ぉて困っちょらんか?・・・要りゃぁえっと(広島弁・沢山)あるけぇ、あげるけぇ取りにきんさいや。」との事じゃった。


 「儂ゃぁ、なんぼぅか買い置きが在るけぇ大丈夫じゃが、妹が残りが少ないのに買えん言ぅて言いよったけぇ、分けて貰えりゃぁ嬉しいのぉ。」と言うて、分けて貰う事に成り、すぐに取りに行ったんじゃった。


 で、受け取りに行った時に、「何で、こがいによぉけマスクが在るんなら?」との儂の問いに、「ハッシー、情けない話なんじゃが・・・まぁ、聞いてくれぇやぁ・・・」と、答えた話が以下である。



 年末に、マスク不足が懸念され始めた頃、友人のお袋さん(市内で独り暮らしをしている)は、『オイルショックの時の物不足』を思い出されて不安に成り、車を運転して市内や郊外にも足を延ばして、ドラックストアや薬局や量販店を回って、何日にも亘ってマスクを買い漁ったらしい。

 その結果、6畳の空き部屋がギッシリ埋まる程のマスクを貯め込んだんじゃそぉな。

 その内に、店頭からマスクが姿を消したが、それでも未だ不安な為に、時々、不定期に店頭に並ぶマスクを求めて、朝早くから並んで分配されるマスクを買いためて行ったんじゃそぉな。

 友人の所へも、「マスクが無いんなら、よぉけ在るけぇあげるけぇ取りに来んさい。」と、ちょくちょく電話をして来よったらしぃんじゃが、友人も幾らか買い置きが在ったけぇ断りよったんじゃが、先月の末に、お袋さんの家(近所なので、普段は、お袋さんが友人宅に再々顔を出すらしぃ)に置いて在った私物を取りに行った時、渦高く積まれたマスクの箱を目にして魂消たらしぃんじゃった。

 「あんたぁ、ボケちょるんかぁ‼・・・何年生きる心算で、こがいによぉけ買ぉたんなら‼・・・何ぃぃ要らん金を使いよるんかいのぉ‼・・・あんたの様な事をするモンが居るけぇ、要る人の手にマスクが回らん様に成るんじゃぁ‼・・・。」と、生まれて初めて、お袋さんを怒鳴り付けたらしぃんじゃった。

 お袋さんに悪意は無かったんじゃけぇ、友人に怒鳴られたんは気の毒にも思えるんじゃが、こがいな話は表立って出んだけで、特別な事じゃ無ぉて、何処にも此処にも在る話なんじゃろぉと思うんじゃった。

 戦後の物の無い時代を経験した人々や、オイルショックのパニックを経験した人々にとっては、『物が無くなると言うフレーズに対する恐怖と衝撃は、強迫観念に成って、特別なモノが在るんじゃろぉと思うんじゃった。

 じゃが、そんな強迫観念に駆られた人々の行動が、今回のマスク不足に拍車をかけちょる事は想像に難くないんじゃった。





 昨日、長男が通いよる通所施設から、「布製マスク」が配布された。



 令和2年3月 10 日に取り纏められた「新型コロナウイルス感染症に関する 緊急対策(新型コロナウイルス感染症対策本部)」に基づいて、国が買 い上げたマスクを、医療機関や福祉施設へ優先配布する事業の一環として、息子が通う施設へも複数枚配布されたらしぃんじゃった。


(別紙)配布する布製マスクに同封するお知らせ文




 上の写真は写りが悪いいんじゃが、マスクに添えられた別紙のコピー(通所施設が、マスクに添えられた別紙を、縮小コピーして、利用者に配布する布製マスクに添付した)で、詳細を御覧に成りたい場合は、「此処をクリック」して閲覧してください。



 また、以下の動画のURLも表記されちょった。



 布マスクをご利用の皆様へ・・・https://www.youtube.com/watch?v=AKNNZRRo74o



 恐らく、各家庭へ配布される布製マスクも、同じ品物じゃと思う。



 「こんな物が何の役に立つのか?」と、思う方も多いぃじゃろぉ・・・。



 巧い事段取りをして、自分が使えるマスクを持っちょるけぇ言えるんじゃと思う。



 例えば、身内に不幸が在って、葬式に出ようとするが、喪服を持って居ない人が居たとしよう。

 仕方なく、普段着で出席したとする。

 それを見た身内の者は、『何だ此奴、失礼な奴だ‼』と感じるじゃろぉし、『喪服ぐらい準備しとけよ‼』とも思うじゃろぉ・・・。

 本人にしてみても、遣り切れなく冴えない気持ちに成るじゃろぉし、『普段から準備しておけば良かった』と、後悔する事じゃろぉし、もしかしたら「喪服が無いので葬式に参列しない」と言う選択をするかも知れん。



 今、「マスクを持って居ない」と言う事は、「葬式に行くのに喪服が無い」と言う状況に似ている。



 今、マスクをせずに電車に乗って、咳やクシャミでもしようものなら、どれだけ冷ややかな視線を浴びる事じゃろぉか?



 マスク自体に、それ程、感染予防の効果が無い事を知りながらも、相手がマスクをしていたら、何と無く安心できるんじゃった。 



 マスクが欲しいと思っていても、どうしても手に入れられない状況の人が大勢おるじゃろう。



 たった2枚の布製マスクじゃが、きっと人々に、細やかながらも「安心と希望」を齎す事が出来るじゃろうと思うんじゃった。



 じゃけぇ、儂には、「アベノマスク」と、嘲笑したり揶揄する事が出来んかったんじゃった。


緊急事態を宣言する安倍首相=7日午後5時43分) 此方より寸借



 安倍晋三首相は7日夕、新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法に基づく政府対策本部の会合を官邸で開き、緊急事態を宣言した。



 対象地域は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県で、5月6日までを期限とし、専門家で構成する諮問委員会は宣言内容を「妥当」と評価した。



 特措法による緊急事態宣言は初めてで、私権制限を伴う措置が可能となる。



 『遅すぎる!』との声も在るんじゃが、色々な準備とか、色々な事との兼ね合いが在ったんじゃろぉ。



 大方、予想されちょった事じゃし、是迄と特別変わった措置が強行される訳じゃぁ無いけぇ、驚きもせんのんじゃが、首相自らが宣言し、国民に説明した事の意味は重い。



 「恩賜のマスク」を着けて、鏡に映して見た。



 今日の会見で、阿部首相が着けちょったマスクも、同じ物なんじゃろぉ。



 鏡を見ながら、今後、どがいな事態に成って行くんかは、予断を許さんのんじゃが、事態が好転して行く事を願いよったんじゃった。・・・アジアの片隅より